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「弟、免許取ったばっかりなんだけど。彼女を乗せて出掛ける前に、助手席に俺を乗せて俺の車で練習したいらしい」
呆れたように言いながら、棗くんは再度面倒くさそうに溜め息をついた。
「え、でもそれなら…早く帰って練習付き合ってあげないと」
「いいよそんなの無視して」
「ダメだよ!だって弟さん、待ってるとか言ってなかった?」
私の聞き間違いじゃなければ、棗くんが口にした言葉の中に『待ってるって何言って…』みたいなニュアンスの言葉が混じっていた気がする。
「……言ってたけど」
「それなら尚更早く帰ってあげないと!ほら、行こっ」
「……でもまだここ来たばっかりだし」
確かにあと少しこの海を眺めていたかった気持ちもあると言えばあるけど、弟さんが待っているのに帰らないわけにはいかない。
それに、私的には凄くちょうどいいタイミングだった。
何となく、心の内が負のスパイラルというか、気持ちが嫌な方向に進んでいきそうな感じだったから。
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