388人が本棚に入れています
本棚に追加
シートベルトをした私を確認し、棗くんはゆっくりと車を発進させた。
「……棗くんの車、何か良い匂いする」
「そう?」
「うん。……棗くんの匂いがする」
以前関さんと綾乃さんと4人で車で出掛けたとき。
あのときは、関さんの車だったからかここまでの緊張はしなかった。
しかもあのときは2人きりじゃなかったし。
隣に座っていたとは言っても、後部座席だったし。
こうやって車の中を執拗に見回す事もしなかった。
多分それは、棗くんの車じゃないからただ単に興味がなかったんだと思う。
でも、今日は違う。
大好きな人の所有する車で、大好きな人の運転で。
いつもとは違う棗くんが見られる絶好の機会。
そしてこんなにも棗くんの香りが漂う車内という密室。
……ドキドキするなと言われても、無理な話。
「棗くんって、何の香水つけてるの?」
「香水なんかつけてないよ。俺、匂いきついのとか苦手だし。結構、鼻敏感だから」
「そうなの?いっつもいい匂いするから香水つけてるんだと思ってた」
じゃあ、ボディーソープの香りなのかな。
なんて推測しながら、自然と棗くんの首周りに鼻を近付けてみた。
最初のコメントを投稿しよう!