あともう少しだけ、好きでいさせて

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シートベルトをした私を確認し、棗くんはゆっくりと車を発進させた。 「……棗くんの車、何か良い匂いする」 「そう?」 「うん。……棗くんの匂いがする」 以前関さんと綾乃さんと4人で車で出掛けたとき。 あのときは、関さんの車だったからかここまでの緊張はしなかった。 しかもあのときは2人きりじゃなかったし。 隣に座っていたとは言っても、後部座席だったし。 こうやって車の中を執拗に見回す事もしなかった。 多分それは、棗くんの車じゃないからただ単に興味がなかったんだと思う。 でも、今日は違う。 大好きな人の所有する車で、大好きな人の運転で。 いつもとは違う棗くんが見られる絶好の機会。 そしてこんなにも棗くんの香りが漂う車内という密室。 ……ドキドキするなと言われても、無理な話。 「棗くんって、何の香水つけてるの?」 「香水なんかつけてないよ。俺、匂いきついのとか苦手だし。結構、鼻敏感だから」 「そうなの?いっつもいい匂いするから香水つけてるんだと思ってた」 じゃあ、ボディーソープの香りなのかな。 なんて推測しながら、自然と棗くんの首周りに鼻を近付けてみた。
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