諦める事は、決して簡単ではない

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多分このクリームパンは、棗くんが自分の朝ご飯用に買っていたものなんだと思う。 食べるの勿体ないな、なんてやっぱり思ってしまったけれど、私はその日の1時間目が終わった後、10分休みの間にかぼちゃのクリームパンをご馳走になった。 「あ、お前何食ってんだよ。それ俺にも一口ちょうだい」 「これはダメ。絶対ダメ」 近寄ってきた冬汰にはっきりダメだと告げると、冬汰はすぐに誰から貰ったものかわかったらしく、呆れた表情を見せた。 「アイツに貰ったやつか。お前、まだ好きなんだアイツの事」 「………」 「もう諦めるんじゃなかったっけ?」 冬汰は潔くクリームパンを諦め、自分の席へと戻って行った。 ……今の私にとって、痛烈な一言を残して。 「……ちゃんと、諦めるもん」 諦める。 棗くんの次の恋を、ちゃんと応援出来るように。 自分がこれ以上、傷つかないために。 棗くんにこれ以上、迷惑をかけないために。 そう、覚悟したのに。 諦めるって、そんな簡単なものじゃないんだって。 今更ながら、再認識した。
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