諦める事は、決して簡単ではない

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「純!今日帰りどう?久し振りにストレス発散でカラオケ…」 「行きたいけど行けない……帰ったら勉強しないと」   10月。 棗くんと出掛けたあのバスケの試合があった日から、あっという間に1ヶ月が経過していた。 あの日の後も、棗くんとは平日はほぼ毎日バスの中で顔を合わせている。 今まで通りに会話もするし、棗くんがバスから降りる直前に、仕事頑張ってね、とエールも送る。 あの日の翌週、棗くんはまた週末のお出掛けに誘ってくれた。 実家のわんちゃんに服を買いたいから、その買い物に付き合ってほしいと言われた。 本当は、行きたくて行きたくて仕方なかった。 でも、思わず「行く!」と即答しそうになるのを必死で堪えて断った。 断った理由は2つ。 1つは、2人きりで出掛けてしまったら、諦めると決めた気持ちが鈍ってしまうと思ったから。 だって、バスの中で会話をするだけで。 顔を見るだけで、その決心がグラグラと揺らぐのがわかる。   そんな不安定過ぎる状態の中で、またデートのような経験をしてしまったら、一生棗くんを諦められなくなる気がしたから。
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