356人が本棚に入れています
本棚に追加
「純!今日帰りどう?久し振りにストレス発散でカラオケ…」
「行きたいけど行けない……帰ったら勉強しないと」
10月。
棗くんと出掛けたあのバスケの試合があった日から、あっという間に1ヶ月が経過していた。
あの日の後も、棗くんとは平日はほぼ毎日バスの中で顔を合わせている。
今まで通りに会話もするし、棗くんがバスから降りる直前に、仕事頑張ってね、とエールも送る。
あの日の翌週、棗くんはまた週末のお出掛けに誘ってくれた。
実家のわんちゃんに服を買いたいから、その買い物に付き合ってほしいと言われた。
本当は、行きたくて行きたくて仕方なかった。
でも、思わず「行く!」と即答しそうになるのを必死で堪えて断った。
断った理由は2つ。
1つは、2人きりで出掛けてしまったら、諦めると決めた気持ちが鈍ってしまうと思ったから。
だって、バスの中で会話をするだけで。
顔を見るだけで、その決心がグラグラと揺らぐのがわかる。
そんな不安定過ぎる状態の中で、またデートのような経験をしてしまったら、一生棗くんを諦められなくなる気がしたから。
最初のコメントを投稿しよう!