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「甘いもの、好きだろ」
「好き…だけど、どうして……」
「今日、いつもより暗い顔してるから。何か嫌な事でもあんのかなと思って」
「………」
私は驚きで目を丸くしながらも、棗くんがくれたそのクリームパンを確かに受け取った。
「それ旨いから、元気出るよきっと」
「……っ」
「じゃあ、また明日。あんまり勉強無理するなよ」
「あ…ありがとう!」
私の『ありがとう』がちゃんと聞こえたかはわからないけれど、棗くんはそのままバスを降りて行った。
「………」
棗くんが口にした事は、決して間違ってなどいなかった。
今日は、病院で新しい検査をする日。
午前中だけ学校に行って、午後は学校からそのまま病院へ直行する。
だから私は昨日の夜から、検査の事が不安で仕方なくてなかなか眠れなかった。
だから、いつもよりも勉強に集中した。
もちろんこんな事、棗くんには言えないから黙っていたのに。
……どうして棗くんは、私の些細な変化に気付いてくれるんだろう。
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