それは確かに、初めての恋だった

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「社会人は、うちらみたいにヒマじゃないんだって。ほら、次純の番だよ曲入れてー」 「……はぁい」 たまに、棗くんが私よりも遥かに大人なんだって事実を忘れそうになる。 バスの中では、高校生の私に話を合わせてくれるから。 私が、自分の話ばかりしているから。 棗くんの仕事の話は、あまり詳しく聞いた事がない。 だからつい、同世代のような気がしてしまうけど。 本当は私とは6こも歳が離れていて。 棗くんの周りには、棗くんと同世代の女性が沢山いる。 そんな当たり前の事を思い出したとき、決まっていつも落ち込んでしまう。 ……棗くんから見れば、女子高生っていう時点でもう恋愛対象外なんだろうな。 「純!歌うの?歌わないの?」 「……歌う!」 やっと受験のストレスから解放されたからか。 この日のカラオケは、史上最高と言ってもいいくらい気持ち良かった。 おかげで、夜帰宅したときには3人とも喉がガラガラで酷い声になっていて。 パパとママには、どれだけ歌ったんだと呆れられてしまった。
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