それは確かに、初めての恋だった

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「最初純が年上の会社員に一目惚れしたって聞いたときは、本当驚いたしヤバいヤツに騙されてたらどうしようって思ったんだけどさ」 「……ヤバいヤツって」 「でも、良い人だよね棗くんは。カズ君みたいに、見せかけの優しさとかじゃなくて。ちゃんと純の事考えてるし、純が初めて好きになった人があの人で良かったって今は思ってるよ」 「……うん。私も、思ってる」 たとえこの初恋が叶わなくても。 好きになって良かったって、思える。 思わせてくれる、素敵な人。    棗くんの優しさは、確かに見せかけなんかじゃないと思う。 何度もあの優しさに触れてきた私には、わかるんだ。 「何か未央、ずいぶん棗くんのイメージ変わったね」 「え」 「だって本当最初の頃はしばらく反対してたのに」 笑いながらそう言うと、未央は何故か一瞬動揺して少し早口になった。 「だ…だからそれはほら、純から棗くんの優しいとことか人柄とか聞いて、良い人なんだなって思うようになったっていうか」    「そうだよね、いっつも未央に棗くんの話ばっかりしてたもんね」 「そうそう!とにかく、男は見た目で判断したらダメって事!あー、私もどこかに良い男いないかなぁ。理想は1こか2こ上の大学生でー…」 そこから数時間、未央の理想の男の話と新しい恋への野望を延々と聞かされて。 帰宅したときには、棗くんにメッセージを送った事なんてすっかり忘れている自分がいた。
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