それは確かに、初めての恋だった

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『返事遅くなってごめん。今、仕事終わった。試験、お疲れ様。結果の報告、待ってるから』 「………」 お風呂からあがり、タオルで髪をクシャクシャ乾かしながら部屋に入ると、棗くんからメッセージが届いていた。 棗くんがくれる文章には、いつも絵文字なんてない。 もちろん、顔文字も。 文の終わりには『。』のみ。 それでも、少しも冷たいだなんて思えないのは、どうしてだろう。 棗くんがくれる言葉には、優しさがある。 好きだから、そんな風に思ってしまうのかな。 『結果出たら、すぐ連絡するね』 私も私で、あまり絵文字でごちゃごちゃさせるのは得意な方じゃない。 女子なら、もっと可愛い顔文字とか使うべきなんだろうけど。 未央のような女子力を持ち合わせていない私は、棗くんとほぼ同じようにシンプルな返信しか出来ずにいた。 「……もっと可愛い感じで送ったら、好きになってもらえたりするのかなぁ……」 虚しい独り言だけが、部屋に響く。 すると、すぐに棗くんから返事はきた。 言葉ではなく、スタンプで返ってきた。 可愛らしい犬のキャラクターが、『了解』なんて言ってるスタンプ。 「……ぷ」 棗くんがこんなに可愛いスタンプを駆使してるなんて、驚きだ。
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