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【幻想GMC40代組の話3】
「善ちゃんはさ、どうして戦闘部隊に志願したの? 善ちゃんなら指揮系統いけたでしょ」
目の前の男はそう言って煙草に火をつけた。赤い瞳は静かに私を見据える。卒業間近の大学の喫煙所。彼とここで出くわすのは何度目だろうか。恐ろしくタイミングがいいのか、または恐ろしくタイミングが悪いのか。
「斎は斎で研究室にこもりっぱなし。まるで何かにとり憑かれているみたいだ」
いや、実際に憑かれているのかもしれない。家族が死んだあの日からずっと。何か悪いものに――そんなことを言いかけて首を横に振る。
「俺はアイツが変わったようには見えないけどね。昔からそういう奴ではあったでしょ」
それは一度のめりこんだら抜け出せない人間であることは変わってない、ということだろうか。
私がどう反応したものかと迷っていると彼はいつものように人の良い笑みを見せる。私や浅間にはできない笑顔だな、となんとなく思った。
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