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『あいつだ』
彰悟がその青年に気が付いたのは、
四月の下旬、
ハナミズキが目を楽しませるようになっ
た頃のことだった。
彰悟の店は月曜日、水曜日と金曜日の
週三日、中堅企業のビル内にある社員食
堂の売店に惣菜パンを納入させてもらっ
ている。
ちゃんとした食堂があるのだが、
忙しく飛び回る営業マンなどに人気らしく
先日も担当者から「もう少し数を増やせないか検討してみてくれる?」と打診をされた。
朝の6時半頃、彰悟はビルの裏の通用口でガードマンに通行証を見せ、
3階の社員食堂へパンの入ったケースを届けに行く。
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