記憶

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「とてもお世話になったのね。」 「そう。本当に懐の広い人なんだ。 オヤジに出会えて僕は本当にラッキーだった。」 「僕、オヤジさんもおかみさんも保さんも店の人も、 みんな好きになったよ。 最初は言葉がなんだか乱暴に聞こえて、 ちょっとこわいのかなって思ったけど、 とってもあったかい感じがした。」 「そうなんだよ。お父さんの大事な人達のこと、 彰悟にも好きになってもらえて嬉しいな。」 そう言って正志は彰悟の頭をぐりぐりする。 「みんなに支えて応援して貰ってるんだ。 片付いてない問題もまだまだあるけど、きっとうまくいく。 よーし、お父さんももっともっと、 がんばるでー!」 正志の関西弁に母と笑いながら、 『そうだ、僕達は今日山城家から逃げ出してきたばかりだった。』 と思い出す。 向こうは今ごろどうなっているのだろう。 まさか連れ戻しにやって来ることはないと思うが、 憲悟の母への執着を思うと無いとは言いきれない気もする。 でも、さっき正志の言った『きっとうまくいく』という言葉がおまじないのよう に効いていた。 『そうだ。きっとうまくいく。 僕も自分が出来ることをがんばるでー!』 彰悟も自分に言い聞かせた。 今日は1日のうちに色んなことがありすぎだ。 でも、一生、今日の事は忘れないだろうと思った。
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