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3人で暮らすようになってすぐ、 正志が提案をした。 「僕達はずっと離れて暮らしてきたから、 お互いに情報量が圧倒的に少ないと思うんだよ。 綾乃さんも意図的に彰悟に何も知らせずに来たそうだし。 お互いの理解を深めるためにも、 これから夕食の時にどんどんお互いに聞きたいことを聞いて、言いたいことを話 ていかないか?」 彰悟は大きく頷いて賛成した。 「僕、お父さんとお母さんに聞きたいことがいっぱいある。」 「そうだよな。彰悟はまだ小学生だからまだ難しい大人の話もあると思うけど、 そういう部分はわかる年になったら話をしよう。 今、話せる事ならなんでも答えるようにするよ。」 それから3人での毎日の夕食の時間はより大切なものになった。 驚いたのは綾乃が今までとは別人かと思うほど良く喋り、 良く笑うことだった。 どうして父と母は離ればなれになったのか、 どうして自分は山城彰吾になったのか。 父と母は自分たちの身に何が起こったのか。 父と母は、彰悟を子ども扱いすることなく何日もかけて話してくれた。 それらは彰悟にとって衝撃的な話だった。 そして両親の特に母の辛い日々を思うと、胸が痛んだ。 『お母さんはずっと我慢して自分を抑えてきたから、 あんまり話したり笑ったりできなかったんだ。 もう二度とお母さんに悲しいことが起こりませんように。 ずっと三人で幸せに暮らしていけますように。』 彰悟は強く願った。
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