父と母の悲恋

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桂木家は元々養蚕から生糸の生産にはじまり、 その後綿などの繊維や織物も手広く扱うようになった地元では有数の事業家だった。 しかし、綾乃達の曾祖父にあたる当時の長男と次男の間に 会社の運営や相続を巡り対立が起こり、 激しい確執が生まれ、親族は二分することとなった。 勿論それは地元に広く知れわたり、 町の人々は区別するために稲荷山近くに住んでいた長男方を『稲荷』、 次男方をその地域名から『田辺』と呼ぶようになる。 長男方が『こちらが本家筋だ』と主張すれば、 次男方は『稲荷は時代遅れで経営手腕がない』とばかにする。 綾乃達の世代は、 親達から対立する相手として聞かされ、 関わらないようにと育てられて来たのでお互いに全く交流は無かったのだか、 綾乃が短大へ進学したことで大きな変化がおとずれた。
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