父と母の悲恋

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「なぜ嫌なのだ。 お前にとってもこれ以上ないほどの良い話ではないか。」 一応、娘の話も聞く寛大な素振りをみせる。 「まだ当分結婚する気もありませんし、 するときには相手は自分で選びます。 なぜお父様の選ぶ人と結婚しなければならないのです。 だいたい、お相手の方は9つも上でお話も合いませんわ。」 「話など嫁になるお前が合わせればよいのだ。」 「なぜ私が合わさなければいけないのです? 最初から合う人と結婚すればいいじゃないですか。」 「自分で相手を選ぶなどと生意気を言っているが、 世間知らずのお前など失敗するに決まっておる。 こういう事は、周りの大人に任せておけば間違いないのだ。」 「世間知らずは自覚しておりますからこれから見聞を広め、 ふさわしい相手をみつけます。 お父様のおっしゃる間違いないというのは、 今現在、地位とお金がある人という意味なのでしょう? 私、そんなものに興味はありません。」 「そんなことを言っていても、 将来苦労するのはお前だぞ。 その時になって泣きついてきても知らんぞ。」 「範子叔母様の例をお忘れですか?叔母様の時も、 お父様『間違いがない男』と太鼓判を押されたそうではないですか。 それが、あんなひどい目にあわれて。」 痛いところを突かれて、父はぐっと言葉に詰まった。
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