父と母の悲恋

9/22
前へ
/253ページ
次へ
一方、山城家の方からはどうなっていると幾度もせっついてくる。 「まだ若くて現実味が湧かぬようです。」 とお茶を濁していると、 「まだ19なのだから仕方がないのかもしれませんね。 では、外堀からうめていくのはどうでしょう。」 と逆に憲悟の方から提案があった。 「実は来月、ドイツから有名な管弦楽団が日本へ公演に来るのですが、 某国会議員がその中から数人呼び寄せて、 軽井沢の自分の邸宅で室内管弦四重奏を目玉としたパーティーを 催すらしいのです。 まあ、地元に力を誇示したいのでしょうな。 そこへうちと桂木家で参加しませんか? もちろん綾乃さんには見合いとは告げずにです。 その後、両家で食事でもという形にしてもよろしいですし。」 勝造は一も二もなく賛成する。 かくして、 綾乃の知らないところで見合いの日程や段取りが決められていった。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

400人が本棚に入れています
本棚に追加