父と母の悲恋

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問題は当の綾乃である。 見合いの話に色よい返事がまだこないのは、 父親が乗り気である以上、 本人が首を縦に振っていないのだろう。 まだ19の娘が9つも離れた男との結婚を戸惑うのはわかる。 しかし、とにかく一度綾乃の目を自分に向かせなければならない。 国会議員の主催するパーティーは我ながらいい案を思いついた。 このあたりでは滅多にお目にかかれない有名な管弦楽団に 綾乃が興味を示す可能性は高いだろう。 また、議員は自分の力の誇示するために地元の有力者や県会議員などを 優先的に呼ぶだろうから、 パーティーには綾乃の見知った顔はほとんどないだろう。 そこを自分が上手にエスコートしてやるのだ。 自分の顔の広さを示すこともできる。 そうすれば綾乃は自分を頼りにし、 二人の距離も近づくのではないか。 綾乃がこちらを向けば蝶よ花よと愛しんでやるのだと 憲悟は胸のうちでわらった。
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