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滅多に聴けぬ弦楽四重奏だからと弟と共に両親に連れられ
パーティーに参加した綾乃は、
偶然を装って山城家から挨拶をされ、
自分が嵌められたのだとすぐに気が付いた。
まだ高校生の弟に素早く耳打ちをする。
「知らない方ばかりで不安だから、
パーティーの間あなたが私をエスコートして頂戴。」
もとより美しい姉に心酔している弟は力強く頷いた。
山城家の面々に、
にっこりと笑顔で型通りの挨拶をした綾乃は、
憲悟がエスコートを申し出る前に素早く身をひるがえし弟の腕を取る。
「あちらのお庭が素晴らしいそうなので拝見してきます。
さあ行きましょう。」
と弟を促してさっさとその場を離れてしまう。
これには勝造も憲悟もあっけにとられてしまった。
「これは綾乃が失礼いたしました。」
勝造が恐縮すると
「いやいや、本当に綺麗なお嬢様ですな。
この会場で間違いなく一番お美しいですよ。」
と、現当主である憲悟の父が鷹揚に答える。
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