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下から掬う様に合わせられたその暖かさに 自然と瞼を降ろせば ツッと頬が下に真っ直ぐ濡れる感覚がして それと同時に神社の中から ポタポタポターッと バケツの水が溢れ床に零れ落ちる音が聴こえた ああ、ついに溢れたか 雨水も 私の溢れたものは一体何なのか 兄を待ち焦がれて耐えられなくなった寂しさなのか 男への自覚した今迄気付かなかった気持ちなのか それとも別の何かなのか 何度も繰り返される口付けが いつの間にか 上から優しく押し付けられるようになっていて そしていつの間にか 男の柔らかい髪が私の頬に落ちていた 私は当分此処から離れないし 男も町を気まぐれに渡り歩くのだろう けど いつか 同じ場所で 日の出を毎日迎えられたらいいかな、と ああ、バケツの中身捨てないと水溜りが出来てしまう end
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