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となり町の神社は、急な階段が長く続く神社だった。男の子は元気にぴょんぴょんと跳ねるようにして階段を上っていくが、正樹と恵理子はぜぇぜぇと呼吸を荒くしながらゆっくりと上って行った。
何段か上にいる男の子がこちらを振り返っては、
「まぁだー?」
「ちょっと待って……」
という会話を、何度か繰り返した。途中、恵理子に「下で待ってれば?」と言っても、恵理子は首を横に振るばかりだった。――頑固なのは会った時から変わらずか、と少し呆れる。
「……おわ、」
突然階段が無くなり、目の前には小さな本堂があった。鬱蒼と茂った木々のせいで階段は不気味な雰囲気に包まれていたが、ここはどこか明るく、穏やかな雰囲気だった。
風が吹くたびに揺れる木漏れ日。
さらさらという葉の擦れる音。
下の道路を走る車の音も、ここに届いてくることはない。
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