プロローグ

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 そうは言っても、人間の意識が脳の中で生み出されていることは案外簡単に証明できる。  一丁の拳銃と一億発の弾丸を手元に揃え、十万人の健康な人間を一列に並べよう。  マガジンに可能な限り弾丸を込め、最前列の人間に照準を合わせよう。  一人目はどこでもいいだろう。  記念すべき一発目の弾丸が銃口をくぐって外界に飛び出し、その後着弾した場所が喉仏だとしよう。  その人間は喉を抑えながら床に倒れ込むだろう。  脊髄の天辺を銃弾がかすめ、どこが痛いのか分からないほどの激痛と呼吸困難に襲われながら、その者は数分後には意識を失うだろう。  これでは意識がどこにあるのか分からない。  きっと拳銃を握るあなたは残念がってるはずだ。  意識の根源はどこにあるのかと。  きっと意識の根源を撃ち抜けば、人間は苦しまずに死ぬだろう。  まだ辛うじて生きようとはしないだろう。  喉仏ではない。  ではどこだ?  おもむろにあなたは二人目の人間に引き金を引く。  人間の急所と呼ばれる体の中心や、臓器の沢山入ったお腹。  四、五人目にしてあなたはもがかずに死んでしまう人間に遭遇するだろう。
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