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皆に計画の説明を終えたソフィアは、早速ジーレスに王宮、もっと詳しく言えば、自分の職場である後宮のシェリル王女の居住エリアに、外部からの傍受が不可能な状態で魔導鏡での通信回線を繋いで貰った。
そして待つ事暫し。取り次ぎの女官を経て、ソフィアの目下の主が魔導鏡の向こうに顔を見せた。
「お久しぶりです、姫様。休みが長引いておりまして、申し訳ありません」
まずソフィアが頭を下げると、シェリルは笑いながら手を振った。
「そんな事は気にしないで? カレンからも『ソフィアは真面目で、これまでにも規定外の休みを取得した事は皆無でしたから、きちんとお家の事情が片付くまで、休暇を取得して構わないと伝えて下さい』と言われているし」
「恐縮です。女官長に宜しくお伝え下さい」
感謝の気持ちで一杯になったソフィアが再び頭を下げると、シェリルが安心させるように言ってくる。
「分かったわ。それに私も『身辺に置くのは気心がしれた者だけにして、姫様が王宮の暮らしに一日も早く馴染んでいただける様に配慮していましたが、この機会に不特定多数の者にお世話をして貰う事に慣れて頂きましょう』と言われているの。だから侍女は日替わりだけど、リリスがしっかり申し送りはしてくれるし、来てくれる人は何回か面識がある人ばかりだし、大丈夫よ?」
「それは良かったです。……少々寂しいですが」
つい本音を漏らしたソフィアだったが、そこでシェリルがにっこり微笑みながら、さり気ない口調で告げた。
「勿論、誰よりもソフィアが一番頼りになるし、側にいて貰えると安心できるんだけど」
「光栄です、姫様」
穏やかに微笑みながら、傍目には冷静にお礼の言葉を述べたソフィアだったが、内心ではシェリルの台詞に悶えた。
(くうっ……、さすがアルテス様の姪に当たられる姫様だけの事はあるわ。無意識にこちらの優越感を、くすぐってくれるなんて!)
そんな事を考えて、密かに身悶えしていると、シェリルが不思議そうに尋ねてくる。
「ところで、今日はどうして連絡してきたの? これから王宮に戻るという報告では無いみたいだし……」
その問い掛けで、ソフィアは瞬時に我に返った。
(いけない。危うく本題を忘れる所だったわ)
そして気を引き締めたソフィアは、本題を口にした。
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