第1章

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「そうですよね! 姫様もそう思いますよね!? しかもその後、お子様方を家来に任せて公爵邸に向かわせて、公爵夫妻は私達に付き添って屋敷にいらして下さって。公爵様は父に状況を説明した後、両親から借金の詳しい状況を聞き出しつつ、これまでの生活全般について徹夜でみっちりお説教されて、公爵夫人のフレイア様は意識を取り戻した妹と、緊張が解けて泣き喚いた私に付いて一晩中宥めて寝かしつけて下さいました」 「叔父様も叔母様も、面倒見が良いタイプですものね」  事情があって公にはされていないものの、ファルス公爵は自分の母方の叔父である上に、エリーシアの養父となって後見をしてくれている人物であり、シェリルは彼の有能さと博愛精神とを改めて実感しながらしみじみと述べた。するとソフィアが、溜め息を吐きつつ話を纏める。 「法定以上の金利を取っていたその男は、公爵にそれを指摘されて金利分を大幅に減らした額を提示してきたので、公爵様がそれを一括返済した上で、我が家に二十五年かけて返済する案を、無利子で提示してくれました。それに従って、それ以後両親は派手な交遊関係をきっぱり絶って領地に引き籠り、領地運営に取り組んでいる訳です」 「それで借金返済の為に、ソフィアも偽名でファルス公爵家で侍女をしていたの?」 「そうなんです。ですが王宮の侍女として仕えるならともかく、一貴族の屋敷に、他の貴族の令嬢が侍女として仕えるのは体裁が悪いし、万が一にもファルス公爵家の評判に傷が付いたら拙いと、両親が申しまして」 「なるほど。それでファルス公爵家では『ソフィア』の名前で勤めていたから、私が王宮に引き取られた時に、補充要員として公爵家から派遣されてきた時に、そのままその名前を名乗っていたわけね」  自分に付いて貰う様になってから、暫くの間『ソフィア』が偽名だと聞かされていなかったシェリルは、この間何となく聞きそびれていた事情が分かって、納得した様に微笑んだ。それを見たソフィアも、小さく苦笑いする。 「はい。でも、ソフィアとして生活した方が長くなっているので、こちらの名前の方がしっくりきますね。『エルセフィーナ』とか呼ばれると、一瞬誰の事かと思ってしまいます」  それを聞いたシェリルは、不思議そうに尋ねた。 「長いって、どれ位なの?」
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