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「本当に、公爵様と世の中の男を比べると、見劣りするのも甚だしいですわね!! そもそも男たるもの、公爵様の様に軽挙妄動などはせずどっしりと落ち着いて構え、物事に対して慎重かつ真摯に向き合い、自らや周囲にとって何が有益なのかを迷わず判断し、率先して行動して周囲の手本となるべく……」
両目を見開き、身振り手振りまで付けて熱演状態に突入したソフィアをもう誰も止められず、三人は顔を寄せてコソコソと囁き合った。
「エリーシアさん、ソフィアさんに理想の男性像なんか聞いたら駄目ですって、あれほど言ったのに……。私、以前延々と、ファルス公爵夫妻について熱く語られた事があるんですから。これ、下手をすると、夕刻までかかりますよ? もう殆ど病気ですよね?」
「ごめんなさい。私の考えが甘かったわ。私もお義父様の事は尊敬しているけど、ここまで熱く語れないわね……」
頭を振り動かしているうちに、常に綺麗に結い上げているソフィアの髪がほつれてきており、それを認めたエリーシアが正直ドン引きしていると、シェリルはそもそもの原因について尋ねた。
「ところでエリーは、どうしてソフィアさんに理想の男性像なんて聞いたの?」
その問いかけに、エリーシアは若干言い難そうに告げる。
「……彼女に片思いしている同僚が、約一名いるから。本人から直接頼まれたわけじゃないんだけど、『付き合ってる人がいるかとか、どんなタイプの男性が好みかとか、さり気なく聞いて欲しい』的なオーラを、最近醸し出しててウザくてね。つい、じゃあ聞いてあげようかな、と」
「サイラスさんね……」
「そんな事、言ってましたね。そう言えば……」
それを聞いたシェリルとリリスが思わず遠い目をしていると、ここでいきなり鋭い叱責の声が、室内に響き渡った。
「それで、公爵様の才能が他者と比べて抜きんでているのは勿論ですが、それ以上に才能がある者を発掘し、適材適所で……。姫様! エリーシアさん! リリス! 私の話をきちんと聞いてらっしゃいますか!?」
「は、はいぃぃっ!!」
「しっかり聞いてます!」
「ファルス公爵の徳の深さが、実感できますねっ!!」
「そうでしょう。それで」
「失礼します」
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