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「すみません、姫様。そちらの部屋に、今現在姫様の領地の管理官補佐を務めている、財務官のディオン殿を至急そちらに呼んで頂けないでしょうか?」
それを聞いたシェリルが、益々怪訝な顔になる。
「ディオンを?」
「はい。税収について尋ねたい事があるとか、灌漑事業の進捗状況を聞きたいとか、適当な理由を付けて頂ければ」
それを聞いたシェリルは小首を傾げて考えてから、推察した内容を口にした。
「ソフィアがディオンに、何か頼みたい事でもあるの?」
「はい。それを姫様に仲介して頂ければと……」
さすがに少し図々しいかとは思いつつも、殆どコネを持たないソフィアは、この際利用できる物は利用しようと腹を括った。すると再び考え込んだシェリルは、軽く頷いて魔導鏡の映る範囲から姿を消した。
「分かったわ。ちょっと待っていてね?」
「はい」
しかし姿を消したシェリルは、すぐに戻って来てソフィアに声をかけた。
「今、リリスに頼んで、執務棟に呼び出しをかけて貰ったわ。お仕事中みたいだから、来るまで少し時間がかかると思うけど大丈夫?」
「はい、構いません。ありがとうございます。姫様のお手を煩わせて、申し訳ありません」
「それは良いんだけど……、一体どんな事を頼むつもり? 差し支えなければ聞かせて貰えないかしら? ソフィアが困っているなら、できる事があるなら手伝ってあげたいし」
心配そうにそう申し出たシェリルに、ソフィアは思い切って言い出した。
「それではお言葉に甘えまして、実は姫様にもお願いしたい事がございます」
「そうなの?」
「はい。それを含めて、ディオン殿が来るまでに、一通りご説明したいのですが、お時間は大丈夫ですか?」
「ええ、特に予定は無いから心配しないで」
「それではですね……」
そこでソフィアは、ルーバンス公爵邸での見合いの様子や、自分だけ断りを入れた事、ヴォーバン男爵が圧力をかけようとした事、屋敷に侵入者があったがそれを撃退した事などを、自分が大暴れした事は伏せた上で簡潔に語って聞かせた。その上で今後の対応策について説明すると、シェリルは目を丸くしたが、そのまま話を続ける。
「……それで、近日中。上手くいけば一週間後位に、弟とルセリア嬢の結婚式が執り行われる事になります。それまでに王妃様にお口添え頂きまして、先程お話しした内容を、姫様にやって頂きたいのです」
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