第1章

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 三人が必死になって頷いたのを見て、ソフィアが満足そうに話を続行させようとした所で、専属ではないが給仕等の業務で交代でシェリルに付いている侍女の一人が、ノックの後ドアを開けて顔を覗かせた。 「ソフィアさん。ご自宅から通信が入っていますので、出て頂けますか?」  その申し出にソフィアは直ちに話を止めて、同年配の彼女を不思議そうに見やった。 「自宅から? 誰からの連絡でしょうか?」 「弟のイーダと名乗りましたが」 「イーダが?」  意外そうに小首を傾げたソフィアに、相手が事務的に告げる。 「隣の控えの間の魔導鏡に、回線を繋いでおきましたので、出て頂けますか?」 「分かりました。ありがとうございます」  そして彼女が扉を閉めると同時に、ソフィアはシェリルに向き直って頭を下げた。 「姫様、申し訳ありません。少し席を外します」 「構わないから、お話ししてきて? でもソフィアに通信って、珍しいわね」 「そうなんですよね。王宮内で働いている事は、周囲には秘密にしてますし、家族にも仕事中は滅多な事では連絡して来るなと言ってあるんですが……」  納得しかねる顔付きのままソフィアは部屋を出て行き、隣接している自分達が待機する場合の控室に入った。そして壁に掛けられている魔導鏡を覗き込むと、確かに王都内のステイド子爵家で生活している弟の顔が映し出されていた。 「待たせたわね、イーダリス。でも、こんな時間にどうしたの? 何か至急の用事?」 「姉さん、落ち着いて聞いてくれ」  何気なく問いかけたのに、怖い位真剣な顔で弟が口を開いた為、ソフィアも瞬時に硬い顔付きになった。 「何? そんなに怖い顔をして。領地に居る父さんと母さんに何かあったの?」 「父さん達は元気だよ。今朝も魔導鏡で話をしたし。そうじゃなくて、もの凄く面倒な事になった」  割と楽天的な弟の、常には無い深刻そうな表情に、ソフィアは嫌な予感を覚えた。 「……まさか、また借金が増えたとか言わないわよね?」 「少し位だったら、その方が良かったかもしれない」  余人に知られない所で借金返済に血道をあげているソフィアが、(本当にそうだったらただじゃおかないわよ!?)と弟を睨み付けたが、イーダリスは沈痛な面持ちで項垂れた。それを見たソフィアは、取り敢えず最悪の事態では無い事が分かって安堵しつつ、弟を叱り付ける。
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