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『あなたには夢がありますか? 私には、ない。見つけ方も、分からない。』
朝の満員電車の中、フリック入力で、いつものように画面に右親指を滑らせる。
『送信』
フォロー数フォロワー数、どちらも数人の、鍵なし裏アカウントに投稿。
いいねが欲しい訳じゃ無い。自分の気持ちを、第三者に言いたいだけ。
携帯の電源を消し、ふぅ、と小さいため息をついて、窓の外をぼんやりと眺めた。
『次は、○○高校前駅~○○高校前駅~』
アナウンスが、私の降りる駅名を言う。
この時間のこの電車に乗り続けて、もう二年目になるが、未だに○○高校前駅の向こう側に行ったことが無い。
毎日同じ時間の同じ電車に乗って、学校で同じようなことをして、同じように帰ってくる。
こんな環状線のような毎日から抜け出したい。
一度でいいから、その先に行ってみたい。
きっと、つまらない私の毎日からは想像もつかない、すばらしいものが待っているんだろう。
でも、中学から無遅刻無欠席の記録を途絶えさせる訳にはいかない。
それに、学校をサボる勇気もない。
つまらないのは日常じゃなくて、私自身かもしれない。
『扉が開きます。右側のドアにご注意ください』
電車から吐き出された私は、いつものように学校へと向かった。
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