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「で、こっちから協力を申し出るってのはおかしくないか?」
落ち着いたところで莉音が突っ込みを入れる。
「いや、あいつらの動向を窺っていたが、俺たちに救援を求める気は満々だった。これはもう気を利かせてこちらから協力すると言っておくべきだろう。皆の衆、そういうわけで明日から頼む」
亜塔は二人に頭を下げた。
「まあ、いい暇潰しと思うか」
二人は顔を見合わせると、口では変なことを言いつつも後輩思いの亜塔に協力することにした。
夏休み二日前。この日はもう午後の授業は無く、部活をするには打ってつけだった。そこで科学部のメンバーは化学教室に集合してまず昼ご飯を食べることとした。何をするにしても腹ごしらえは必要というわけである。
「昨日の夜、大倉先輩から謎のメールが届いた。どうやらこちらから申し入れるまでもなく三年生を連れてきてくれるらしい。昼過ぎに来るとのことだ」
もぐもぐとコロッケを食べながら桜太は報告する。
「謎?今の話のどこに謎があるんだ?」
生真面目にも迅が突っ込みを入れる。今の話だと普通のメールが来たとしか思えないからだ。
「それがさ、何か長い文章だったんだよね。我ら三年が参戦すれば科学部も特異点になれるとかなんとか」
桜太はせっせと二個目のコロッケを口に入れながら要約する。おかげで亜塔が書いたメールの五分の一も伝わっていない。情熱は無意味となっていた。
「特異点?無限大にしてどうするんだ?それは山のように変人を集めることが可能ということか?それともこのまま消えてしまうという意味か?解らないな」
特異点と聞いて食いつくのは優我だ。物理において特異点は大問題となるので仕方ない。
「そうだよな。ブラックホールでも作る気だろうか?」
同じく物理分野であるブラックホール好きの桜太も首を傾げた。ブラックホールの先にあるのは特異点なのだ。
「あのさ。特異点で盛り上がらないでよ」
冷静に千晴が軌道修正する。
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