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日高など聞き憶えがなかった。
この人なら、会って話していたら顔を忘れない気がする。
だれかと似た声なのかもしれない。
もっとも、あたしの記憶は頼りなくて当てにはならない。
「ずうずうしくないか。ビールが苦手なら飲まなきゃいい話だ」
「これがわたし。知ってるでしょ。わたしを自分の高校に紹介したのが運の尽き。観念したほうがいいよ」
あたしの腕をつかんだまま、日高という人は深々といったため息をついた。
この人でいいかもしれない。
一瞬そう思った。
けれど、腕をつかむ手がしっかりとあたしを捕らえているのに痛くない。
この人じゃだめだ、と内心で直感じみた言葉を吐いて切り捨てた。
腕を放そうとすると、日高という人の関心があたしに戻ってくる。
「名前は?」
「……鈴亜」
「フルネームだ」
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