528人が本棚に入れています
本棚に追加
来た道を憶えているだろうかというほど、コンクリート街を曲がりくねる。
やがて、森のなかから抜けだしたように視界が広がった。
道路の向こう側には公園があった。
植樹された緑の連なりはやはり森のように見えたが、コンクリートのような無機質さはなく、ライトアップされていて幻想的だ。
言葉もはっきりしない雑音にすぎなかった声は、笑い声に様変わりする。
幻想的な様は油断を誘う囮(オトリ)ではなかった。
あとは散るだけという桜を口実にした、無味乾燥な集まりにすぎない。
もっとも、罪人を待つ門番たちのざわめきではない、という保証はない。
そうであってもかまわない。
むしろ、そうだったらいいのにと思う。
最初のコメントを投稿しよう!