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「おっと……すみません」
云いながら振り向いた人はよろけたあたしの腕をつかんだ。
「大丈夫です」
顔を見ることもなく、つかんだ腕から離れようとした矢先、頭上ですっと息を呑む音が聞こえた。
何かに気づいたような、もしくは驚いたような気配に感じて顔を上げると、そのとおり、あたしを見下ろす眼差しはどこか喰い入るような雰囲気だった。
背が高くて、男の人なのに綺麗な人だと思った。
「急に立ち止まって悪かった」
ついさっきとは違い、あたしを自分よりずいぶんと幼いと見切ったのだろう、言葉遣いが砕けた。
ただ、そんなことよりも、知っているかもしれない、とあたしはそう思った。
だれ?
「日高先生、わたしも一緒に行く。ビールよりもサワーがいいから」
内心でつぶやいたあたしの質問には女性が答えた。
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