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「散らかってるけど、どーぞ」
そう言って棗くんは家の玄関の扉を開けて私を招き入れてくれた。
「お……お邪魔します……」
散らかってると棗くんは言ったけど、決して散らかってなどいなかった。
玄関には、仕事用の靴とスニーカーがちゃんと綺麗に並べられている。
フローリングの床の色は、濃いめのダークブラウンで統一されていて。
リビングは、至ってシンプルだった。
テレビに、木製の丸いテーブル。
三人掛けのグレーのソファー。
それから、大きめの観葉植物が一つ。
部屋のタイプは、1LDK。
棗くんの寝室はリビングのすぐ隣で。
扉が開いていたから、棗くんがいつも寝ているであろうベッドが目に映ったけれど。
何か変に意識してしまって、ベッドからはすぐに目を離した。
「部屋…綺麗だね」
「そう?テーブルの上とかゴチャゴチャだけどね」
見るとテーブルの上にはパソコンと一緒に仕事の資料らしきものが乱雑に置かれていた。
だけどこれくらいは、散らかってるだなんて言わない。
棗くんの部屋の何倍も散らかってる部屋を、私は知ってるから。
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