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「出張なんかなければいいのに」
「俺は出張結構好きだけどね」
「え、そうなの?」
「その土地の旨いもの食べれるし」
「……棗くん。あのね、ちなみになんだけど」
「何?」
「……今月って、出張多かったりする?」
「今月?」
彼女のその遠慮がちな言い方と、『今月出張』のキーワードで、何となく彼女の言いたい事が見えてきた。
今までそんな事わざわざ聞いてきた事がないのに、何故今そんな事を確認するのか。
きっとその理由は、一つしかない。
「今月は多分出張あるよ」
「それは…いつ頃?」
「いつだったかな。月末の方だった気がするけど」
「え!」
ウソ。
本当は、今月の出張は中旬あたりに一度だけ。
しかも日帰り。
彼女が何を言いたいかわかっているくせに、それでもこうやってわかっていないフリをする俺は、純粋な彼女とは真逆の腹黒い性格だと思う。
つい彼女の素直なリアクションが見たくて、意地悪を言ってしまう。
そう。
今月の月末、4月30日は、彼女の19歳の誕生日だ。
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