素直な彼女の、一途な思惑

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「そっかぁ……月末、出張あるんだ……」 その素直なリアクションが見れて完全に満足した俺は、やっと本当の事を告げた。 「嘘だよ」 「え?」 「30日はちゃんとこっちにいるから」 「………」 「夜は予定空けておいて」 今年の4月30日は、金曜日。 俺は仕事で彼女は学校があるから、会えるのは夜しかない。 「……棗くん、私の誕生日覚えててくれてたんだ」 「え?あぁ、まぁ……」 「嬉しい。……本当は覚えてないんじゃないかって思ってたから。……凄い嬉しい」 「………」 彼女が自分の誕生日を教えてくれたのは、確かまだ付き合う前の一度きりだった。 俺の誕生日を聞かれて、その流れで答えてくれたときに聞いただけ。 俺は正直、人の誕生日を覚える事はあまり得意ではない。 友達の誕生日だってすぐに忘れるし、家族の誕生日すら危ういところだ。 でも何故か、彼女の誕生日だけは、頭の片隅にハッキリと記憶されていた。 付き合う前だったにも関わらず。 もしかしたらあのときから、既に俺は彼女に夢中だったのかもしれない。
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