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「あっ!」
「…何だよいきなりでかい声出して」
俺の家のキッチンで勝手に酒のつまみを作っていた関は、突然声を上げた。
「紅茶、減ってるじゃん!」
「は?紅茶って…」
「純ちゃんがいつか家に来るときのために、ネットでお前がこっそり買っておいたノンカフェインの紅茶の事だよ」
ついこの間の週末、彼女が家に訪れた際に飲んだ紅茶の袋を何故か関は手に持っていた。
キッチンの戸棚に閉まっておいたはずなのに、コイツどこから引っ張り出してきたんだよ……。
「いいから、それ棚に入れておけよ。つか、勝手に出すな」
「いやいやいや!俺聞いてないんだけど!」
「何を」
「お前、家に純ちゃん来たの?」
「……来たけど」
わざわざ関に言う必要はないから言ってなかった。
というより、彼女が自分の家に来た話なんて、わざわざ他人にするような話じゃない。
それに、あの日の事を他人に詳しく話すなんて出来そうもない。
……あの天然小悪魔に完全に翻弄されていた自分の姿しか、思い出せないから。
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