素直な彼女の、一途な思惑

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散々関に不安を煽られた数日後、彼女は無事に入学式の日を迎えた。 『学校の雰囲気どう?友達出来そう?』 さすがに入学式に顔を出すわけにはいかず、俺はその日の仕事の休憩中はずっとスマホを手放せずにいた。 送ったメッセージに対して、彼女はすぐに返信をくれた。 『うん!女の子いっぱいで緊張するけど、楽しめそうだよ』 絵文字や顔文字はめったに使わない彼女。 だからこういうメッセージのやり取りでは、なかなか彼女の気持ちが読み取れない。 会って顔を見れば、一発でわかるのに。 『夜電話するから。後で詳しく話聞かせて』 昼休憩最後のメッセージを送信して自分のデスクに戻ろうと休憩室を出たとき、ちょうど俺の目の前を桐谷部長が通り過ぎようとしていて目が合った。 「お疲れ様です」 「……お疲れ」 桐谷部長はちょうど今出勤してきたばかりなのか、上着とカバンを手に持っていた。 そうか。 午前中は純の入学式があったから、今日は午後出勤なのか。
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