ラインを越える、一歩手前

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その言葉で、自然と口が動いた。 「……じゃあ、今から見に来る?」 「え?」 「うちのポメラニアン」 「……え、い、いいの?で、でも、棗くんの実家に私なんかがお邪魔するなんて、棗くんの家族が何て言うか…」 「そんな緊張しなくても大丈夫だよ。うち、今俺しかいないから。両親は朝早くに出掛けたし、弟もバイト行ったからしばらく帰ってこないよ」 両親と弟が家にいるときに純を連れて行ったら、きっと質問責めにされて彼女が窮屈な思いをするに違いない。 でも今なら俺しかいないから、ブルー達とゆっくりじゃれつく時間もある。 それに何より、俺がすぐにでも会いたくて仕方なかった。 「……本当に?行ってもいいの?私邪魔じゃな…」 「邪魔じゃない。……むしろ、来て」 最初は躊躇していたものの、結局彼女は承諾してくれて。 実家から最寄りの駅までとりあえず来てもらう事にした。 「うん、じゃあ駅着いたら連絡して。迎えに行くから」 電話を切ると、三匹の犬達は尻尾を振りながら俺の顔色を窺っていた。 「……ありがとな。お前たちのおかげで仲直り出来たよ」 電話をかけるタイミングを犬に作ってもらうなんて。 ……本当、情けなくて人には言えない。
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