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「揚げ物、苦手なくせに」
「だ、だって…揚げ物がダメだって言おうと思ったんだけど、やっぱり言えなくて…」
確かにあの場で言えないのは仕方ないと思う。
俺だって、もし純の親に食べれないものはないか聞かれたら、咄嗟に何でも大丈夫だと言ってしまうに違いない。
「嫌じゃないの?家で飯食べていくとか。見てわかったと思うけど、幸のヤツ本当嫌な女だろ。多分アイツ平気で失礼な事言うと思うから、飯なんて一緒に食わない方が…」
「でも私は素敵なお姉さんだなぁって思ったよ?」
「……どこが」
嘘だろ、絶対。
「何かハキハキしてるところが。棗くんが容赦なくやられてる感じが可愛くて、ちょっと微笑ましかったもん。やっぱりお姉さんには逆らえないんだね」
「………」
クスクスと楽しそうに笑う彼女の頬をギュッとつねると、彼女は少しふてくされた顔をした。
「生意気な事言うから、お仕置き」
そう言って、軽くつねった部分にキスしようとしたとき。
ドンドン、と勢いよくドアがノックされ、その激しい音と共に扉がバタンと開いて幸が現れた。
「飲み物持ってきてあげたよ。今日暑いし麦茶でいいでしょ。あ、ヤダ、もしかしてお邪魔だったー?」
……確信犯だ。
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