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「………」
俺は開いた扉のドアノブに手をかけ、そのままゆっくりと扉を閉めた。
これは悪夢だ。
あり得ない。
幸が夏にこっちに帰省するのは、いつも盆の時期。
今日はまだ七月だから、帰省するには早すぎる。
なのに何故ここにいるんだろう。
……とりあえず、見なかった事にしよう。
「え、棗くん、扉閉まっちゃったよ…」
「やっぱり今日はやめよう」
「どうして?ていうか棗くん、今の人って…」
「それは後で説明するから、とりあえず車乗って…」
と言ってる間に、あっけなく扉はまた開いてしまった。
そして、悪魔がニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「棗。あんた何逃げようとしてんの?」
「………」
「早く入りな。せっかくお姉様が帰って来てやったっていうのに、逃げるとかあり得ないからね」
「……最悪だ」
頼むから、悪い夢であってほしい。
このタイミングでこの暴君の登場は、予期していない最低最悪の展開だった。
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