何があっても、君の傍にいるから

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「何でそんな離れんの?」 俺と彼女の距離は、浴槽の端から端。 一緒に入りたくない気持ちはわかるけど、だからってここまで距離を取らなくてもいいのに。 「……棗くん、やっぱり意地悪だね」 「どの辺が?」 「私の反応を見て楽しんでるところ。……棗くんにとっては大した事ないのかもしれないけど、私にとってはこんなのキャパオーバーなんだから」 「……俺だって、こんな必死になんのは初めてだっつの」 彼女はいつだって俺の事を『経験豊富な大人の男』扱いする。 まぁ、歳が六つも上ならそう思われても仕方のない事なんだろうけど。 でも現実は全く違っていて。 『彼女と旅行』という、弟の新でも普通にしているような事でさえ、俺にとっては初めての経験だった。 だから実際は、年齢なんか関係なくて。 俺だって、多少は浮かれるんだよこの状況に。 「ひゃっ」 狭い風呂の中で必死に縮こまっている彼女の腕を強引に引き寄せると、俺とその小さな身体との距離は簡単にゼロになった。
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