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もう、一人で堪えなくてもいいんだ。
私には、苦しみを分かち合える人がいる。
それがどれだけ私を救ってくれているのか、棗くんはきっとまだ知らない。
私がどれだけ棗くんに夢中なのか。
棗くんはきっとまだ全部を知らない。
「あ」
「え?」
「そろそろ時間だ」
そう言われてベッドの横に置いてある時計に視線を移すと、面会時間終了五分前だった。
「えー……」
入院してからは、毎日顔を合わせているのに。
いつも時間はあっという間に過ぎてしまう。
棗くんがこの部屋を出て行くときは、何とも言えない寂しさに襲われる。
……欲を言えばキリがなくて、本当に困る。
「……もう、帰っちゃうの?」
「明日また来るから」
「………」
「我慢して。……離れがたいのはあんただけじゃないんだから」
「え…」
そこで棗くんは少し屈んで、私の涙で濡れた頬にキスをした。
「また明日。おやすみ」
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