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「……手術?」
「うん。あ…でもね、そんな難しい手術じゃないから心配しなくても大丈夫だよ!今までも何度か経験してるし…」
自分を励ます意味も込めて、わざと笑って説明した。
不安な顔をしながら、伝えたくなかったから。
でも私の事をよく観察している棗くんは、私の作り笑顔に敏感に気付いた。
「無理して笑わなくていいよ」
「………」
「俺は手術とか、そういう経験がないから…正直どんな気持ちになるのかわからないけど。……でも多分、何回経験したって慣れないんじゃないかと思う」
「………」
「違う?」
首を傾げてそう聞いた棗くんに対して、私はぎこちなく首を左右に振った。
「……違わない。……どうしてわかるの?」
「わからないよ。ただ、あんたの気持ちを想像しただけ」
私の立場になって、私の気持ちを考えてくれる。
それって、誰にでも出来る事じゃないと思う。
弱音を吐ける相手がいる。
その事実に、私は救われていた。
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