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「……卑屈過ぎるって、思ったでしょ今」
「……ちょっとだけ」
ほら、やっぱり、言わなきゃ良かった。
「でもその気持ちを否定するつもりはないよ。それに俺があんたの立場だったら、もっと卑屈になってるだろうし、もっと酷い事他人に対して思うだろうし」
棗くんは私の気持ちが軽くなるような言葉を選んでくれた。
そして私は、そんな棗くんに甘えて言葉を続けた。
ベッドから上半身だけ起き上がった状態の私を棗くんが抱きしめてくれているから、互いに互いの顔は見えない。
だからこそ、こんな事まで口にしてしまったのかもしれない。
「……私、やっぱり棗くんより先に死んじゃうのかな」
棗くんの手の指先が、ピクンと震えた。
「……何言ってんの」
「変な事言ってごめんね。でも、時々思うんだ。……私、いつまで生きられるのかなって」
これは私の中で、究極の弱音だった。
生きている限り、ずっと突然死の恐怖に耐えていかなきゃならない。
手術を繰り返して、体調が安定したとしても。
もし、冠動脈の瘤が突然破裂してしまったら。
一瞬でもそんな考えが頭をよぎっただけで、おかしくなりそうになる。
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