419人が本棚に入れています
本棚に追加
「棗くん…だよね?純ちゃんの彼氏の」
「あ…はい。梶真といいます」
「純ちゃんの主治医の夏目です」
「……ナツメ?」
自然な振る舞いで、棗くんに握手の手を差し出した蓮先生。
その先生の名前を聞いて、一瞬固まる棗くん。
そっか。
先生の名字が夏目って、棗くんは知らないんだっけ。
「夏目蓮です」
「夏目…あ、そうですよね。名字ですよね」
「ハハッ、なかなかない偶然だよね。僕も純ちゃんから聞いたときはちょっと驚いたよ。君の話は純ちゃんから本当によく聞いてて…」
「せ、先生っ!」
慌てて『余計な事言わないで』とジェスチャーと表情で伝えると、先生はにっこり笑ってみせた。
「でも一度会ってみたいと思ってたから、今日は会えて良かったよ」
「僕も、一度会いたいと思ってたんで。いつも彼女がお世話になってますから」
「………」
『彼女がお世話になってます』
その響きが、妙に気恥ずかしくて、でも嬉しくて。
少し、こそばゆかった。
最初のコメントを投稿しよう!