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「それに、ほっぺにキスまでしてくれて」
「えぇっ!?」
次々と聞かされる昔話に、私はもう絶句するしかなかった。
ほっぺにキスって。
何してるの、私……。
先生はいつものように淡々と話しながら、私の脈や顔色をチェックしていた。
「……へぇ。それは可愛い初恋ですね」
と、棗くんが口にすれば、
「あれは初恋だったのかな?純ちゃん」
と、王子スマイルを私に見せる。
「は…初恋は棗くんだもん!私、棗くんしか好きになった事ないもん!」
と、必死に棗くんと蓮先生に訴える私。
すると蓮先生は、
「なんだ、やっぱり僕は初恋の相手じゃなかったのか」
なんてわざとらしく寂しそうに笑いながら、その後も少し世間話を続けて病室を出て行った。
「……せ、先生、普段あんなふざけた事言うような人じゃないんだけど。どうしちゃったんだろうね」
私が棗くんに夢中な事を知ってるくせに、あんな事言うなんて。
先生にも意外と意地悪な一面があるんだって、長年の付き合いで初めて知った気がした。
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