君の前で流した、涙の理由

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電話を終えて病室に戻ると、純はまだ目を閉じたままだった。 「純がいつ目を覚ますかわからないから…冬汰くんと未央ちゃんはディルームの方で少し休んでるって。棗くんも疲れたでしょ?一回家に帰って休んでも…」 「いえ。僕は…ここにいます」 意識がいつ戻るかはわからないけれど、彼女が目を覚ました瞬間に傍にいたいから。 俺は彼女のベッドの傍に見舞い客用の椅子を引き寄せ、その椅子に腰かけて彼女の小さな手を優しく包み込むように握った。 「……じゃあ少しの時間、純の事梶真に任せるかな」 俺の背後に立っていた部長が、口を開いた。 「俺達今日まだ飯食ってないんだよ。ちょっとそこの食堂で食べて来てもいいか」 「あ…はい、もちろん」 「食べたらすぐ戻るから。いいか、絶対純から目を離すなよ」 「……わかってますって」 部長達が病室から出て行き、俺と彼女は二人きりになった。 「……本当、良かった」 誰にも発言を聞かれる事のない空間に気を緩めた俺は、胸の内を言葉にして吐き出した。
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