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すると彼女の冷たい小さな手が、ビクンと僅かに震えた。
「…っ!」
その僅かな震えに気付いて彼女の顔に視線を移すと、瞼が小さく震えていて。
そして、スローモーションのようにゆっくりと瞼が開いて、澄んだ瞳には俺の姿が映し出された。
「純…」
「……良かったぁ……」
「え?」
「……私、ちゃんと棗くんの傍に戻ってこれたんだ……」
小さな掠れた声で、呟いた。
俺の瞳には、嬉しそうに笑う彼女の姿が映っていた。
生きている。
それだけの事が、こんなにも尊いものだなんて。
もっと生きたいと強く願うその姿が、何よりも眩しく見えて仕方なかった。
カッコ悪くてもいい。
ダサくてもいい。
もう、涙を堪えるなんて出来なかった。
「……棗くん……?」
「……生きていてくれて、ありがとう」
その小さな手を握りしめながら。
俺は泣いた。
我慢を知らない子供のように。
そんな俺を見て、彼女も一緒に泣いた。
今までの苦しみを、全て吐き出すかのように。
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