君の前で流した、涙の理由

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しばらく二人で泣き続けた後、落ち着きを取り戻した彼女の方から先に口を開いた。 「あのね、手術は…成功したって事でいいんだよね……?」 「うん。もう大丈夫だよ。完全に詰まりは解消されたから、一週間くらいで退院出来るって」 「本当に?」 「ここで嘘つくわけないだろ」 「……嬉しい。早く退院したいな」 無邪気に微笑む姿を見ていると、思いきり抱きしめたくて手を伸ばしそうになる。 無条件に、可愛いと思ってしまうこの感覚。 ……そうか、愛しいってこういう事なんだな。 「……退院したら、真っ先に俺の家に来てくれる?」 「え?棗くんの家に?」 「充電させてよ」 付き合い始めた頃は、純粋過ぎてこういうときに使う『充電』の意味さえ理解出来ていなかった彼女。 だけど今はさすがに理解出来るようになったらしく、手術の後だからか少し血色の悪かった頬にちょっとだけ赤みがさした。 「フル充電ね」 薄紅色に染まった頬は、逆らう事なく頷いた。
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