その恋は、Destiny

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就職の内定が決まってから、私は今まで以上に勉強に励んだ。 一年前の春、入院したせいで学校の勉強に追いつけなくなってしまったとき、本当に悔しかった。 だから退院してからは、夢を叶えるための勉強を出来る事がただただ嬉しかった。 中学生や高校生の頃の勉強量とは比べようもないくらい、寝る間も惜しんで頑張った。 そして国家試験の直前は、もう本当に時間との勝負だった。 24時間あっても足りないくらい、毎日のように参考書のページを追いかけていた。 自分でもわかっている。 私は何に関しても、要領が悪い。 やると決めたら何でもストイックにのめり込んでしまうし、少しの時間も無駄にしたくないと思ってしまう。 だから国家試験直前の頃は、心も体もボロボロだった。 自分で自分を追い込み過ぎて、逃げ口を塞いでいた。 そんな息抜きを知らない私に救いの手を差し伸べてくれたのは。 やっぱり、棗くんだった。 『……あんた、相変わらずバカだね。どんだけ要領悪いんだよ』 遠慮のない言葉を、散々並べられてしまったけれど。 『息抜きしないと、あんたまた倒れるよ』 あのとき棗くんが、自分を追い込み続けていた私を止めてくれなかったら。 今私は、こうして笑っていられなかったかもしれない。
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