その恋は、Destiny

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バス停から徒歩で三分。 何階建てなのかも地上からじゃよくわからないくらいの高層ビルの中に、棗くんが勤めている会社が入っている。 ちなみにここには当然パパもいるはずだから、パパにはなるべく見つからないように注意を払いながらビルの正面玄関を覗いていた。 玄関からは仕事を終えたサラリーマンやOLさんがぞろぞろと出てきていた。 「もうすぐ出てくるかな」 ちなみに、スマホにはまだ連絡はない。 だから棗くんが会社を出ていない事は明白だった。 時計の針が18時を回った瞬間から、正面玄関の人の出入りを注意深く観察していたけれど、なかなか棗くんが出てきそうな気配はなかった。 「……やっぱり残業になっちゃったのかな」 棗くんの嬉しそうな顔を見るのは今日は無理そうだな。 と、半ば諦めかけたとき。 高層ビルの正面玄関から、男性三人と女性一人の組み合わせが一組出てきた。 正確に言うと、男性二人が前を歩いていて、そのすぐ後ろを男性と女性の二人が歩いている。 「…あ」 思わず声が出てしまうのも仕方ない。 スーツがよく似合う綺麗系の女性の隣を歩いている人が、棗くんだったから。
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