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別にやましい事なんか何もないのに、反射的に棗くんから視線を逸らした。
そして再度チラリと視線を送ると。
やっぱり棗くんの視線は私の姿を捉えていて。
「……純?」
と、私の好きな声で私の名前を呼んだ。
「何やってんの、こんな所で」
少し驚いた顔で棗くんは私に近付いてきた。
逃げ場なんてとっくに失ってしまった私は、正直に白状するしかなかった。
偶然を装うには、無理がありすぎる。
「えっと……お疲れ様です。あの、待ち合わせ、どこにいたらいいのかなって思って。それでいろいろ考えたんだけど、棗くんの会社の近くで待ってるのが一番良いかなと思って……」
「そんなの別にどこで待ってても良かったのに」
嬉しそうに私に駆け寄る棗くん。
を、想像していたはずなのに。
現実は何故かいつもそう甘くはない。
むしろ棗くん、ちょっと迷惑そうな顔してるし。
するとさっきまで棗くんの隣を歩いていた綾乃さんに雰囲気が似た女性と、棗くん達のすぐ目の前を歩いていた30代らしき男性二人が私達の方に近付いてきた。
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